煮浸しや麻婆茄子、カレー、パスタなど、和洋中色々なアレンジ料理を楽しめる「茄子(ナス)」。
ポン酢でさっぱり食べたり、チーズでグラタンにしたりするのも美味しいですね。一年中スーパーに並ぶとても身近な食材です。
でも調理してみると、せっかくの綺麗な紫色が茶色く変色してしまったことはありませんか?せっかくなら綺麗な紫色のまま食卓に並べたいものです。
ここでは、ナスが綺麗な紫色をしている理由や、調理するときにすぐに変色してしまう理由や対処法について、分かりやすく紹介したいと思います。
茄子(ナス)はどうして紫(むらさき)なの?
ナスの美しい紫色の部分には、たくさんのアントシアニンが含まれています。
アントシアニンは天然色素であるポリフェノールの一種で、特にナスに含まれるものをナスニンと呼びます。
アントシアニンは青紫色をした天然色素の一種で、ナスの他にはブルーベリー、ぶどう、プルーンなどの果実や、サツマイモ、赤たまねぎ、紫キャベツ、赤シソに多く含まれています。
どれも紫っぽい色の果物や野菜ばかりです。ではナスはどうして色づくのでしょうか?
種を運んでもらうため
まず皮がきれいな色をしている理由は、虫や鳥に食べてもらうためです。美味しそうに見せることで、動物に食べてもらい、どこかへ行ってフンと一緒に種を撒いてもらいます。
そうすることで、自分が動き回ることなく、新しい場所で育つことができます。
紫外線から守るため
ナスの紫色の成分となっているアントシアニンは紫外線の害を消すという大事な働きをします。
紫外線とは、太陽の光の中に含まれている光のことです。泳ぎに行ったり、山に行ったりすると、私たちが日焼けをしてしまうのはこの紫外線のせいなのです。
日焼けには、体内への紫外線の侵入を防ぎ、細胞を守ってくれるという働きがあります。これと似た働きをするのが、ナスに含まれるアントシアニンです。
ナスは紫外線を浴びると、アントシアニンを作り出して自らの細胞を守っているのです。紫外線は害を与える光なので、ナスも紫外線の害を消したいのですね。
日光が当たると紫になる
実がなる前のナスに黒いポリ袋をかぶせて育てると、白いナスができます。また、太陽が当たらないように実の一部にシールを貼って育てると、シールを貼った部分だけ白いナスができます。
このことから、ナスを紫色に変化させているのは、日光(紫外線)であるということが分かります。ナスの紫色には日焼け止めクリームのように紫外線をカットする役割があるのですね。
また、日光の当たる量が多いと色が濃くなり、少ないと薄くなります。ナスのヘタを切ると、ヘタの近くは白っぽい薄紫色をしているのはこのためです。
茄子(ナス)を炒めると茶色く変色するのはなぜ?
ナスは加熱すると茶色く変色することがあります。それはアントシアニンが、水に溶けやすい性質があるからです。
そのため調理中にアントシアニンが溶け出し、色落ちしたように見えるのです。ナスミンが溶け出すと煮汁も濁ってしまいます。
例えばナスを入れて味噌汁を作ると、ナスが色あせ、汁の部分も黒ずんでしまうのはこれが原因です。
ナスを色落ちせず鮮やかな色のまま調理するには、短時間で素早く火を通すことが大切です。
ナスの表面に切れ目を入れて、火の通りや味の含みをよくすると良いでしょう。
また、表面積を大きくできる乱切りや、薄めにカットすると火が通りやすくおすすめです。
他にも変色を防ぐには、油でコーティングするのも効果があります。調理の際、フライパンに十分に油を引き、ナスを油でコーディングします。
これにより水分が蒸発しにくくなり、結果的に変色を防ぐことができます。
油でコーティングするのはカロリーが気になるという場合は、ナスの表面に油を薄く塗ってレンジであらかじめ加熱しておくのも同じ効果があります。
少し手間はかかりますが、こうすることで余分な油を使わず、調理時間も短くすることができます。必要最低限の油がナスの皮に吸収され、その後の調理でも変色を防ぐことができます。
茄子(ナス)を切ると茶色く変色するのはなぜ?
ナスは加熱しなくても切って置いておくと、茶色く変色してしまいます。これは調理の時のように色が水に溶けだしてしまうのが原因ではなく、実に含まれる成分が空気に触れることによって起こる現象です。
ナスは皮で紫外線の害を消していますが、もし実の中に紫外線が入ってしまうと種に害があるので、念のため実の中にも紫外線の害を消すものを持っています。
それがクロロゲン酸(ポリフェノールの一種)と、ポリフェノールオキシターゼと呼ばれる酵素です。これらは一般的にはアクとして知られています。このクロロゲン酸とポリフェノールオキシターゼが空気に触れると、酸化して茶色の物質に変化します。
このため、切り口が変色してしまうのです。これはリンゴを切って置いておくと茶色くなってしまうのと同じ理由です。
アク抜きの方法
変色したナスは、見た目が悪くなるだけでなく、渋みが出て、料理の味も落ちてしまいます。これを防ぐには、アク抜きが必要です。
煮ものや汁もの、漬物などを作る際や、切ってすぐに調理しない場合は、水にさらします。ナスを切ったら、水または食塩水を張ったボウルに10分ほどさらします。
ナスの味を損なわないように、0.5~1%程度の濃度(水カップ1に塩小さじ1/5程度)の食塩水を使いましょう。塩水につけるとナトリウムイオンがポリフェノール類の周辺に壁をつくり、酵素の働きを抑え、酸化を防ぐのでナスが変色しないのです。
炒め物や揚げ物は、アク抜きなしでもおいしく食べられます。独特の渋みも油と料理するとほとんど感じなくなります。
もしアク抜きしたい場合には、切り口に塩を適量振っておけば、アクを含んだ水が出てきます。ナスから水分が出てきたら、ペーパータオルなどでよく拭き取ります。
アクを抜かなくても良い場合も
時期によっては、どんな調理法でもアク抜きをしなくてもよいケースがあります。それは旬である真夏よりも少し前の6月ごろに売られているものです。この頃に出荷されているナスは、エグミが少ないのでアク抜きをしなくてもおいしく食べることができます。
美味しい茄子(ナス)の見分け方は?
美味しく調理する方法は分かったところで、次は新鮮なナスを見分けるポイントをいくつか紹介します。
まずはハリとツヤがあるナスを選ぶようにしましょう。皮にツヤがあり黒々としていて、実が締まっているものが新鮮な証拠です。そしてヘタのすぐ下の部分が太いのも、よく熟しているナスです。
次にヘタの部分を見てみます。
ヘタの切り口がみずみずしく、筋が出ているものは熟したナスの特徴です。また、ガクのトゲがしっかりしているものを選びましょう。
またずっしりと重たいものは、実がしっかり詰まっている証拠です。皮にシワが寄っているものや、ヘタやガクが元気のないものは乾燥しており日にちが経過していることがあります。注意しましょう。
ナスの傷
採れたてのナスでも、新鮮であるにもかかわらず茶色く変色していることがあります。
これらは栽培時に風に吹かれて、果実が葉や幹にすれたときに付くスリ傷や、移送時にぶつかったりすることでできた傷で、かさぶたのように茶色くなります。
また、ナスのお尻部分だけが茶色くなるのはすれた傷ではなく、ナスが子孫を残すために実を堅くして、種を残そうとするためです。
どちらも食べても害はありませんが、固く味も劣るので、変色した部分は取り除いて調理した方が良いかもしれません。
ナスの旬は夏?秋?
ナスは季節を問わずスーパーに並んでいますが、その旬は長く、5~10月頃の初夏から秋にかけてです。そのため夏・秋どちらとも旬となります。
出荷量のピークは8月頃のため、夏に手に入るナスの方が安く手に入ります。9月頃から収穫されるものを秋ナスといいます。夏のナスはみずみずしいのに比べ、秋ナスは種が少なく実が締まっています。
茄子(ナス)の栄養成分やカロリーは?
ナスのカロリーは100gあたり22kcal、糖質は2.9gと、同じ時期に旬を迎える野菜と比べるとナスはカロリーや糖質は比較的低い野菜です。
ナスにはカリウム、β-カロテン、葉酸、アントシアニンなどの栄養素が含まれます。カリウムにはまた、余分なナトリウムを尿として排出するため、高血圧防止にも役立つとされています。
むくみ解消効果やデトックス効果も期待できます。余分な水分とともに身体の熱を外に出す効果も期待できます。
皮に含まれるアントシアニンには、抗酸化作用があり、免疫力の維持や老化防止に役立つ働きがあります。
美肌のためにも欠かせない栄養素といわれ、特に旬である夏には紫外線の影響で肌へのダメージが大きいため、意識して摂りたい栄養素です。
また、アントシアニンには眼精疲労の予防・回復や目の働きをアップさせる効果があるとも言われています。
皮に含まれる成分なので、できるだけ皮は剥かずに調理することをおすすめします。ナスのアントシアニンを効率良く摂取するためには、揚げものや炒めものにするのがよいでしょう。
ナスは油との相性が抜群で、油を使うことによっておいしくなる効果もあります。
まとめ
年中手に入り、体にも良いナス。価格もお手頃なので、積極的に食べるようにしたいですね。少し難易度は高いようですが、ナスはプランターでも栽培できるようです。
太陽が当たらない部分を作って、色々な模様のナスを栽培してみたら楽しそうですね。ナスが苦手なお子様も興味を持ってくれるかもしれません。